中尾杏子『句集 冬の陽炎』(本阿弥書店)より

  • 2020.09.20 Sunday
  • 11:14

 

 

1997年。
「沖長崎」主宰。第4句集。

どの木からともなく蝉の木となれり

鳥わたる麺麭屋ま白のトレー積み

大学は僧院に似て白木槿

衣被剥いてをんなの聞き上手

別館へ曲りくねつて湯ざめせり

些事よぎる胸もと日傘ひらくとき

死ぬならば先といふ夫夕牡丹

蛇苺女は泣かずなりにけり

あたためるだけのカレーや夜長来て

汗し見る貞操帯の鉄の孔

壱岐牛の黒ひき緊る野分あと

鮮烈のまづ口火切る蔦もみぢ

みづひきの花に眦切られけり

指先に海の日あつめ蜜柑挘ぐ

黄砂降る検査入院とはいへど

抗癌剤効きゆく桜蒼白に

白牡丹影もろともに剪られたり

鬱の夏泡吹虫にでもなるか

葡萄吸ふつつがなき日の珠として

海撲つて月下の鯔を追ひあぐる

初泣きの夫の涙につられけり

事切れしままに耳栓床に凍つ

経文に多き無の字よ春の雪

使徒像の石のまなざし花ふぶく

夕桜ぽつくり夫に死なれたる

討死のさまに玉葱抜かれあり

亡き夫のくぼみ戻らぬ籠まくら

足のみが見え天領の松手入

新芽噴き裸木に名のよみがへる

耳たぶの冷えをほぐせり納税期

連翹の黄より醒めゆく早瀬かな

ー中原道夫氏ー
クレソンを摘むと跼めし大つむり

都忘れ小ぶりに咲くを厠より

稲づまを栞りて閉ぢぬマタイ伝

島裏は波のしのび音花常山木

玲瓏の露浴び己れ立て直す

 

JUGEMテーマ:俳句

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