佐々木正樹『句集 暮らし』(花神社)より

  • 2018.09.20 Thursday
  • 22:56

 

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平成13年。
「幡」所属。
なんと自由な句境なのだろう。
ただただおもしろく読み、感心させられた。

温度が感じられる句が多い。
挙げたい句が山ほどあって困るほど。
掘り出し物の句集でした。


つんつんとつんとつまづき雀の子

咳きこみてそれでもきれぎれに叱る

くちびるにきて風花の熱かりし

餅搗いてたんたん大地をよろこばす

初湯より上げほかほかの子を包む

ふらここの高くて頬がおつこちる

腹へこませてふくらます浮袋

みほとけの薄着衆生は着ぶくれて

泳ぎきてプールの肩を鷲づかみ

東京は震度五京は猫の恋

はなびらにはなびらの影白牡丹

解体の案山子の骨は十文字

滝凍てて一山息をひそめをり

蟹缶に混じる薄骨多喜二の忌

八月や泪をためて聞く話

愛嬌は器量にまさる零余子飯

頬被りすればするどき眼となりぬ

大欠伸せり貰ひ手のなき仔猫

ワイパーの埒外落花貼りつけり

桐一葉充分思案してのこと

干布団叩くにハート形の鞭

何にでも摑まり歩く冬の蜂

風ぐるまくるりと風を誘惑す

桜守兼務造幣局職員

市電より人走り出る時雨かな

冬耕の遠くにゐるは弥生人

まるごとが海鼠の肝つ魂である

桜桃忌その気になりしこと一度

看取りかな団扇で煽ぎやるだけの

椿落つ大往生でごわしたな

急かすから口にまくなぎ入つたがな

おもながでおとなしさうで渋柿で

水涸れて吊橋高くなりにけり

かんこんと初湯の湯桶つかひをり

抽斗にこつそりばれんたいんでえ

金鎖ほど少年の頸に汗

座禅草うしろ姿といふがあり

時の日の十二時となり飯を食ふ