森田純一郎『句集 街道』(東京四季出版)より
- 2024.03.27 Wednesday
- 19:40
2024年
「かつらぎ」主宰
第4句集
色持たぬ忠雄の館冬に入る
また雨か呟き聞こえ峠の忌
玉虫の飛ぶや物部氏の墳に
縁日に日除はみ出す物多し
義援乞ふ声涸れ募金箱の灼け
郡山廓跡にも金魚飼ふ
人も樹も背高き国に黄落す
間なく去る祖国の秋を惜しみけり
客は我一人聖夜の理髪店
黒ビール干してEU離脱問ふ
絮飛ばしたんぽぽのただ突つ立てる
光撒き散らし金魚の仕分けさる
五稜郭要に四囲の山粧ふ
天高し遺跡から打つEメール
タクシーのドアを福笹はみ出しぬ
芽吹きけりかつてハイネの住みし家
獣めく法螺の音響く修二会かな
魂の走れるごとき修二会かな
萩揺らすほどなる風の古刹かな
秋灯下一句一句に対峙せり
国生みの島を目指すや旅始
鉾縄を跨ぎ一喝されにけり
脱稿にひとり酌みたる夜長かな
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