物語を信じる心

  • 2018.09.07 Friday
  • 23:37

 

人は物語が好きです。
なぜなら物語はおもしろいからです。
よって、自分にとっておもしろい物語を真実と解してしまう習性があり、本人はそれに気づいていない。
物語と対極にあるのが禅でいうところの前後裁断。この一瞬一瞬しか存在していない、過去も未来も思考の産物だというところ。
悟りというのは物語は思考の産物でしかないというところを知ってしまうということでしょう。

たとえば、霊魂の存在。あるという人もいればないという人もいる。
ないというよりあるというほうがおもしろいのです。
なぜなら、物語が生まれるから。
人は親を選んで生まれ、この世になんらかの使命をもってそれを成し遂げると魂のステージが上がってより高い転生の世界へと生まれ変わる、というと壮大なスケールの中に組み込まれて意義深さを感じられる。
これからは水瓶座が支配する世になるので、物質から精神が重視される世界になるといったもの。
特定の宗教の信仰はまさに物語を信じる心。
クリスチャンはイエスは処女マリアから生まれ、神の子として人の罪を一身に受けて復活したという物語を信じ、オウムの信者は麻原彰晃を最終解脱者として認め、自らも修行者としてその世界観に沿って解脱を目ざしていくという物語。
ちなみにオウムはバブルという世間的にいい大学を出て、いい会社に就職し、結婚し、裕福なくらしをして楽しむという人生の物語を受け入れることができなかった、もしくは成し遂げられなかった人たち。

スピリチュアルな話だけでなく、政治の世界でもそう。
憲法九条が日本を戦争から守ってくれてきたという物語があり、アベノミクスが日本を幸せにする、共産主義が世界の平等をもたらすという物語があり、それらが心地いいと思う人はそれらを信じる。
夢や希望というのは物語を実現していくこととも言えます。夢や希望がなくては生きていけないというのは物語に依存している心でしょう。

物語は文学の世界だけでなく、人々のくらしに密接に関わってきました。
人生というのがそもそも物語にされてしまう。
ある人物の一代記は物語でしょう。
本当は縁が連なっているだけのことに過ぎず、関連性も明らかではないのに順々に物語が完成されるようにつなげていく。そうしないと語れないしおもしろくないのです。

また科学の世界においても物語は存在します。
そもそも説明というのが物語。
原因と結果をつなぐところは物語以外の何物でもないでしょう。
そこに本当らしさ、心地よさを見出すかどうか。

歴史も当然物語です。
太平洋戦争のDVD10巻を見終わりましたが、物語として見るから覚えやすい。
これが断片だけだとよくわからないでしょう。
江戸時代や幕末が好きだという人が多いですが、それも自分なりの物語があるからでしょう。司馬史観なりある種のつながりが心地いいという以上でも以下でもありません。

あるゴールがあってそれに向かって達成しようとする、その物語が好きな人同士は一致団結するでしょうし、違う物語を好む人たちはまた一致団結して対抗する。
世界はこうやってある種の物語を共有してきたのでしょうが、多様性がどんどん広がっていくと共有する物語も多様化し、大勢で一致団結することが難しくなってきます。
ニッポンがんばれとか絆とか災害があるたびに叫ばれますが、それもまた物語の一つでしょう。
災害が起こると物語が生まれづらくなる。なぜなら連続性がたびたび途切れるからです。
ただそこを乗り越えるという物語は生まれます。

最初の霊魂の有無で、おばあちゃんが見てくれている気がするというのは物語ですが、これはたしかにそういうことはあるもので自然です。霊魂はあるでもなくないでもない。これがあるかないかに分かれ、説明すると物語に依存して信じてしまっていることになる。
これはまずいわけです。
人間は弱い存在だから物語を信じないと生きていけない、物語を提供して信じさせてくれる人がいい人だということになる。
親しい人が亡くなって「天国から見ているよ」と言ってあげることは慰めになるでしょう。その程度の物語は素朴なものです。
ただし物語への依存は信じる人同士を団結させますが、人を分裂させるものでもあります。
瞬間瞬間に生きるということは瞬間瞬間に死ぬこと、つまり物語を作り出しません。
文学作品としての物語はさまざまなことを考え、感じさせ、心を豊かにしれくれるものではあります。ただ現実を一本の物語化しようとすることは物語依存であり、夢遊病者に等しいと言えるかもしれません。
つまるところ、人は意味を見出したがるものですが、意味というのが一つの物語であるのです。

 

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