鷹羽狩行『句集 十五峯』(ふらんす堂)より

  • 2020.07.09 Thursday
  • 23:37

 

 

2007年。
「狩」主宰。第15句集。

年迎ふ山河それぞれ位置に就き

添へ書きはみな声もちて年賀状

一枚の凧一枚の海の上

老病死愛恋選句始かな

太陽へ雪間それぞれ声をあぐ

啓蟄や庭よりあがり稿を継ぐ

川上に鉄橋の弧や蓬摘

蝶と言ふ声に姿のはやあらず

日の暮るる前の明るさ燕子花

沸騰の湯気折り曲げて青嵐

靄あげて雨をよろこぶ夏木立

鮒ずしや食はず嫌ひの季語いくつ

牛・馬を洗ひしむかし夕焼川

山茶花の箔こぼれつぐ月夜かな

走り根が幹にかしづく神無月

チェーホフを今にして読む北塞ぎ

綿虫の生死不明の吹かれやう

目を閉ぢて白猫となる冬日向

木守柿落ち村ぢゆうが暗くなる

梟の嘴なきまでにふくらめる

寒灯のかたまるところ門司と呼ぶ

天窓に日のあるうちの柚子湯かな

数へ日や用の多くて無きごとく

初鶏の火の声あげて闇の中

磯に洲に千鳥ちりばめ初日の出

金堂の雪解しづくの連珠かな

にごりかすかに白魚のすまし汁

春はあけぼのとつぶやきまた寝落つ

薄目してこの世見たまふ内裏雛

かんざしは笛は太刀はと雛納

放ち飼ひさながら庭の四十雀

たかんなの短剣反りに出でしかな

父の日や拳で叩く松の幹

仕ふるがごとく膝つき岩清水

総身の汗を脱ぐなりシャツを脱ぎ

十本の指の間にある涼しさよ

手枕を子規に倣へばちちろ虫

露けしや名刀に銘筆に銘

鷺白く置き残したる刈田かな

割れ物のごとくに割れて柘榴の実

葛の谷いくつ吉野の山幾重

流るるを忘るるまでに水澄めり

これは一槍と呼びたき青秋刀魚

幹すつく柱すつくと神の留守

初富士や新幹線を真一文字

大峯や火を焚いて土おどろかす

幹に瘤走り根に瘤寒に耐ふ

死者は戻らず生者には寒戻り

さざなみを要あつめに猫柳

花の種蒔けばその夜の夢に花

穴を出しことに驚き蛇走る

逆立ちに地球の重みうまごやし

百の窓かがやきはじめ卒業歌

虚子の忌を忘じ花鳥の世に遊ぶ

八重桜よりも重たげ日輪は

畔塗つて湖国かがやくばかりなる

竿ときに越えて逆立つ鯉幟

更衣こころの山河ひとつ越え

白鷺の一点のほか青田波

あやめ色とはこの色と咲きゐたり

鬼百合のこれみよがしの蕊の反り

青蜜柑島がそろそろ重くなる

一本の火の畔となる曼殊沙華

つるべなど見ぬ世の釣瓶落しかな

うしろ手に閉めし襖の山河かな
 

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