鷹羽狩行『句集 十六夜』(角川学芸出版)より

  • 2020.07.14 Tuesday
  • 23:08

 

 

平成22。
「狩」主宰。第16句集。

音なきを山の音とや大旦

初富士の刃の反りを裾野まで

一枚の明るさを置く薄氷

下萌の月明りにもわかるほど

白梅の咲くに弾みのつきはじむ

春めくやわだちのなかの深轍

刃をたつるごとき声あり百千鳥

一と一出会ひて一に螢の火

虹立ちてたちまち色の束となる

豊満な蕾かかげて蓮田かな

老鶯の声の摑める近さとも

光堂色なき風の中に訪ふ

風の出て花野いちめん浮き上がる

爽やかや馬首を叩けば尾が応へ

風神を真つ先に乗せ神渡し

一湾に日のゆきわたり大旦

よべ掃きし道の明くれば恵方道

いくたびも大輪咲かせ初投網

天窓の円を残して鳥雲に

竹の串抜いて目刺を解き放つ

はらからを見上げてゐるや落椿

あるときは白虎のさまに卯月浪

一本はけふ眼の高さ今年竹

わが青の時代いつまで黴の花

床までの柱時計や夏館

鹿の子の斑の美しき歩みかな

こみ上ぐるものあるらしや泉にも

山荘の畳や素足こそよけれ

硯洗へば海と陸つづきなる

活けてまだ足らぬ思ひの盆の花

かなかなとゆふづつと入れかはりたる

月よりも待たるるものに月の客

杖よりも鈴を支へに秋遍路

白鷺の化粧瓶立ち水の秋

浮かぶもの一切置かず水の秋

糸の揺るるは蓑虫の旅ごころ

干茸や百戸五十戸いま十戸

入口の蔦紅葉してワイン蔵

箔を置くごとくに星や水温む

踏ん張りし筍掘の跡かこれ

的中の矢の揺るぎなき青嵐

父の日や客のごとくに子を迎へ

氷柱につつと映りて過ぎし人

ふためぐりならぬ人の世天の川

おのづから歩けば道となる花野

蛇穴に入る美しき世のあるごとく

百幹の間あひ正しく竹の春

凄まじきものに月下の崩れ簗

秋耕の折り返すとき天仰ぐ

誕生のかの日もかくやうろこ雲

神々も旅わたくしも旅にあり

寒き身の泣けば涙であたたまり

物知りがゐて落着かぬ日向ぼこ
 

 

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