変身願望について

  • 2015.10.30 Friday
  • 19:39

変身願望について

2015.10.30

変身願望を持つ人は子どものみならず、大人になっても多いでしょう。

それは夢があるからいいねと言ってお茶を濁されがちなことですが、大きな問題を含んでいるように見えます。


子どものころは何にでもなれると思っていたのに、大人になってから現実を知ってしまい、まあこんなものかと現実を受け入れていくという話はよく聞きます。

大人になっても夢を見続ける人は素敵だということもよく言われますが、前者は枠にはまってしまっただけであり、後者は今とは違う枠にはまりたいと願い続けているだけで思考の「枠」組は変わらないでしょう。

子どものころは何にでもなれると思っていた、というのは本当でしょうか。

これは子ども時代を美化しているだけで、実際は子どもは無能感が強い。

無能感が強いがゆえに全能感を得ようとして、違うものになりたがる。それがヒーローだろうと単に早く大人になりたいというのでも同じ。

だから少しでもなにかできるようになれば、親に見てもらい、ほめてもらいたがる。

これが大人になっても続いていくわけです。自分はとくに自慢できるものもとくにない、自信が持てない、無能感にあふれているからこれは本当の自分ではない、だから本当の自分を探していくのだ、と言ってパワースポットの旅に出たり、それらしい資格を取りに行ったり、先生と呼ばれる職業を目指したりしていくことになる。

子どもがそのまま大人になっただけ。若者がいつかすごいことをする、と根拠なく思っているのも無能感を隠そうとしているだけでしょう。

昔からよく言うことなのですが、「ありのままのあなたでいいよ。」と人に言うのは罪なことです。

ありのままでいいことは確か。変身願望を抱かずともそのままでいい、と。しかし、そう思っていない人が他者からそう言われて一種の慰めを得るのは違う形で変身願望を少し叶えただけ。ありのままでいいとわかっていれば、他者からそういうことは言われないし、そこに認めてくれる人、認められる人という関係ができてしまう。認める人も支配感を感じられるので共依存の関係となる。

できることをどんどん増やしていって、全能感を得ようとすること、これは際限がありません。

独裁者となっても不全感は残る、というよりますます募っていく。優越感は劣等感の裏返しですから、優越感を維持し続けるために自らの立場を固守しようとするし、自らを強めれば強めるほどそれを止めようとする者が現れる。

実は、はじめから人はなんにでもなれます。

どんな分野でもトップに立つには競争があり、倍率があるので実際に実現するかどうかはともかく、どんなトップの人も自分と変わらないと知ること。トップがいいというのは人の価値観ですから、底辺にも同じようになれる。

結局すべては立場だけのこと。立っている場が変われば多少見え方は変わる。ただし、それは全能感をもたらさないし、本当の自分というのとも関係がない。

なぜなら、ある特定の立場が本当の自分ではなく、もしそういうものがあるとすれば、すべてになり得る自分。「自分」という言葉ではなく、「不分」と称したほうがいいでしょう。本当の自分とは不分。語義矛盾しますが、そこにしか全能感はない。全能感なくして変身願望はやむことがありません。

全能とは神ですから、不遜きわまりないと言われるかもしれませんが、もしそう思われればここまでの話を正確にたどってはいません。自分の枠の中でとらえようとしている。優越感によって神になろうとする人は不遜ですが、すでに述べたようにいつまでたっても全能感はそれでは得られないからです。いつまでも無能感にさいなまれていくことになる。もし全能を神と言うなら、特定の立場とは無縁なので、どの立場にもなれるがゆえに不遜になりようがない。

なんにでもなれるので、何かになる必要を感じなくなるというわけです。誰に言われなくてもありのまま。

他者を見るときも英雄視すればするほど、期待に応えられなくなると悪者に変わってしまう。悪者だと思っていたのに案外いい人だったという逆の見方も。

どちらも自分のこうあってほしいという投影ですから、当然そうなる。変身願望を他者に投影しているのですから。

なんにでもなれると知れば一切の変身願望落ちてゆくなり

ヒーローはヒールにヒールはヒーローに転ず希望の投影ゆえに

占いにどっぷりはまる人も変身願望が強いことが多いですね。

自分を知ると言うものの、占いによって断定されることで確固とした自分へと変身できる、と思い込んでいる。

断定は自分が下したのではなく、占い師が下したもの。または自分で占っても誰かが作った枠組みで占ったのだから、これも同じ。

占いの書にぽんと載す花梨かな

DSC_1421

役者はどんなものにも変身できる、というのがいい役者なのだと思います。

自分に合う役とそうでないのがあるにしても。人はなんにでもなれるのですから。

演劇や占いの本を買取しました。

新聞に変身願望の記事があったので、今日の記事はそれらに触発されて。

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