2017年・自選二百句
- 2017.12.27 Wednesday
- 11:51
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ケロリンの桶いつぱいに初湯かな
うつくしき鎖骨と言はれ片時雨
ひと刷の雲走らせる四日かな
a ladyに戻れぬ人や木葉髪
風花であり湯の花と出逢ふまで
たましひのてらされてをりゆきあかり
コーヒーのドリップ三滴しずり雪
この氷柱きのふの氷柱継ぎしもの
冬銀河祈りし数を黙しけり
への口でへのへのの目や春隣
流氷や一万五千発の核
ぽこあぽこぽこあぽこぽこ日脚のぶ
即席麺真中決まりぬ寒卵
冬座敷ありをりはべりいまそかり
反り冴ゆる御寺の太刀の細面
鶻に負けて漢検準一級
・・・・・踏絵踏む・・ ・・・・・
冬銀河ほどの孤独にたたずめり
一枚の水田のやうな蕨餅
肝つ玉母ちやんであれ淀大根
春障子折り目正しき棧の影
脇差の長さとなりて分葱抜く
八つ橋の三角三辺冴え返る
百灯落ち素心蝋梅一樹なり
丹田のふくらみに沿ひお身拭
春一番上る下るの京の町
少女らの駆け出してより風光る
牧開くイーハトーブにチョーク音
曳いて来し山羊に曳かれて青き踏む
宸翰の祈り花蕾のほつほつと
木津川のゆらりきらりさららうらら
牡丹散り風なき庭となりにけり
土ふるや東北弁の散りしまま
蜜蜂よ花なら探さない 待つの
地球儀のやうに丸めて仔猫抱く
孕み猫宿す百万一回目
年表にただの一行春の闇
龍天に昇るや記紀に句点なし
切株に尻も平らか山笑ふ
しやぶしやぶをくぐる肉厚若布かな
ぬつくぬつくぬつくぬつくふきのとう
春風よ弥勒菩薩の小指まで
ギヨエテと始まるチェロや春の夢
ゴッホより普通に向日葵が好き
春光や金次郎読む本真白
ひさかたの光のかたち朝桜
ほどよきは即かず離れず花筏
なだらかに春の海へと千枚田
与那国の大地ごろごろ母子馬
春寒や喪服につかぬ死のにほひ
白木蓮五線譜の線足すやうに
養花天誕生仏の小指ほど
雪柳ひとつ隔てて駐屯地
一年生ところどころに鏡文字
盆栽の桜大地に根差すごと
芽起しの雨や書物の海の底
みづからの蔭へ余さず花あかり
美空てふ地に物種を蒔く嫗
花筵歩まば地底へとすとん
老僧の放つ下ネタ飛花落花
著莪の花伝ひ山荘美術館
仏師彫るごとに春光散りにけり
リラ冷やニーチェしづかに狂ひたる
ふらここや砂場にぬつと注射針
空を空と山を山とす春の雷
レコードの針をひと刷昭和の日
夕焼を呑み干してゆく鯉のぼり
楽聖の胸像弾く薄暑光
母の掌の形の記憶柏餅
風迎へ入れてみどりの日の読書
ラムネ玉モロボシ・ダンの星にいる
馬上より花野の人をおどろかす
仙人掌の花見に来ぬか社長室
青梅を噛れば青きままの我
窪みへと沈む実梅や廃寺跡
服脱げば蟻百キロの旅路かな
古書店の奥の稀覯書熱帯魚
青蛙十七音をひとつ跳び
一山を丸ごと活けて竹の秋
赤茶けし巌を弾く滝飛沫
日焼にも諸相ありけり男風呂
蜘蛛の囲の雨後を光らす二三粒
ところでとところてんまづすすりけり
宇宙外生命体と馬刀貝と
滴りを掬ふも一句掬はむも
薫風や坐りよさげな石一つ
花の名を問はず語りの日傘かな
浜辺より席埋まりゆくカフェの夏
西日射しウルトラマンに変身す
ギャロップに砂きらめける夏の海
弱者とは一体誰か七変化
万緑を引きこむ湖の底ひかな
考へてをる噴水も雲も見ず
禅僧の筆くるりんと団子虫
時の日や同じ遊びをやめぬ子ら
蝿一寸呼んで手の甲くすぐらす
汗引くやサインコサインタンジェント
青梅雨や仏の眼まで御簾の垂れ
古書市に積み上がる書や雲の峰
西日射すマイスター・エックハルトの書
虹色の付箋の資料夏期講座
最大の位置エネルギー飛瀑浮く
片蔭をはみ出してをり馬の尻
父の日に父知らざるを思ひ出す
万緑を滝の千切れてゐたりけり
p6つ並ぶスコアや桐の花
朝涼や顔のひらたき日本人
E=MC²蟇
日ざかりのマクドナルドの子くるくる
ハンカチをけふは忘れずきみ去れり
炎天の港ヒアリとテロリスト
夕焼の眼を閉ぢて岬馬
炎天を統べる如来の智拳印
峰雲やヒの字に寝ぬる馬ばかり
海の日に一閃せしか女護の島
通信簿開いて閉じて夏やすみ
朝採れの鱸手早く放射盛
五里五里の里より奈良へ青田波
見つかれば隣の本へ走る紙魚
浮き輪ごとひつくり返り仁王立ち
ビル挟むクレーン三基晩夏光
みづうみの色の波打つ縮かな
明王のガラス張りなる夏の果
山羊の口とどかぬところ木槿風
山羊の目の開いてをるだけ鰯雲
落蝉の苦しみきつてこの軽さ
ぬばたまの闇稲光滴れる
小さくなる母より大粒の葡萄
日の射して虹がごろりと滝の前
ここからは電波圏外葛の花
本棚へ色なき風といふ一書
水澄むやキリマンジャロの香る店
観音の十一面を訪ふ秋思
豊の秋地元の名士勢揃ひ
ミルフィーユ状に季重ねされて秋
浮かぶかに鬼灯垂れてゐたりけり
ひと声に園児一列彼岸花
グランドにナイン定位置秋日濃し
秋冷や淡々と抜く親知らず
朝顔の向きあふパン屋金物屋
レコードの波打つ二百十日かな
組織には属せぬ性や秋扇
天高し角打ち込んで王手飛車
馬の毛の馬を離れて律の風
雇はれも雇ひもせずに夜業かな
万有を滝へと釣瓶落しかな
人はただ一本の管秋気澄む
三玲風遠州風と松手入
異世界へ続くドアノブ露の朝
一献の傾く二十三夜かな
身に入むやここはラーメン激戦区
外つ国の人もおむすび秋日和
流れ橋流されてより鳥わたる
眉月よ駆けよワルキューレの騎行
茶の里の水ふんだんに新豆腐
足跡の動く青空鳥わたる
宇宙人連れ去りに来い大花野
鯨ぞと告ぐ人おらぬ岬かな
鵙高音天心ぎゆつと縮みけり
古老柿の鈴生り山羊の乳房めく
秋小寒いま仮縫ひの赤き糸
玉章や母に告げたきあれやこれや
幾何解きし目で仰ぎたる氷柱かな
水の秋猫はボウルにすつぽりと
卒寿より誰もとがめず日向ぼこ
照紅葉ファウルフライをこぼしけり
おにぎりよりおむすびが好き小鳥来る
行く秋や驢馬が日向を奪ひ合ふ
宇宙とは死とは我とは海鼠とは
マーラーのフルオーケストラ冬の浜
みつしりと鎖しばれる行者堂
神棚の高さに葱が立つてゐる
水痕の縷々たる涸滝と火星
セザンヌの眼にさらされず蕪煮らる
観音の千手合掌鰤起し
荒れし手の配る朝刊三百部
起立して第九合唱団の黙
よぎりたる影の耀ふ床紅葉
達磨忌といへど常なる只管打坐
ずわい蟹量り抱へて量らるる
独り身の透くばかりなり冬の月
秒針ちちちち勤労感謝の日
ポケットに青空文庫漱石忌
満場の目に放たるる鷹一羽
風花や丘駆け上る山羊の群
母詫ぶる息の白きを見つめをり
大隅に骨を埋めん頬被
鉛筆を尖らせ冬の日のスケッチ
寒鯉や突き当たるまで蹴伸びせむ
千丈の滝懐に山眠る
大雪や白鳥王の眠る城
動くともなく動きをり冬の川
冬紅葉しづめ広沢池眠る
なほらざる寝癖や風の冴え冴えと
山羊おのが影と口づけ枯芝生
滝ひとつ通していよよ雪景色
峯ひとつ沈めて冬の泉かな
廃校の時計くるはず寒椿
山小屋の相似形にも年木積む
どつかりと山羊眠らせて山眠る -
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