杉本雷造『句集 昨日の翳』(卯辰山文庫)より
- 2019.07.23 Tuesday
- 21:58
平成3。
「頂点」代表同人。
第3句集。
老梅を撫でれば眼窩ありにけり
手を拍(う)ちて雪が降りだす伊賀の里
仏顔のすこし見えたり凍雑巾
絵日傘をゆっくり廻す爆心地
流星のあとの暗がり水子塚
北枕してよく見える紅葉山
いちまいの経木となりて囀れり
赤ん坊の熟睡(うまい)のつづき鳥交る
秋の雨ふっと千人針が顕(た)ち
のどちんこ見せては嘆く盆の家
海鼠を噛む私のなかの他人なり
十指みな耶蘇名が欲しき寒茜
垂直の影と歩いて降誕祭
倒立のイエスを映す冬の川
囀りのなか赤ん坊が直立す
大硝子が通りゆくなり広島忌
白猫が横に伸びきる魂祭
暗幕に白い手がみえ聖夜劇
正面のかんばせ暗し菊人形
薄氷もここまで夜の音楽堂
十字架にわが骨格を想う冬
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